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≪探索10日目 探索12日目≫

探索11日目


Diary

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キャラクター解説

フィア=ウィンド
 この物語の主人公。これがアタシの書く日記である以上、主人公の地位は揺るがないのだ!
 友人から預かった犬が元気を無くしてしまい、生命の力が溢れるというこの世界に来た。

フィア「帰りたくないっ! 帰りたくないようっ!!」

石刀火 凍檻 (いわとび こおり)
 フィアのパーティメンバ。妙に立派な黄色いマユゲが特徴の青年。
 顔立ちは整っているけど、言葉を放つと残念でならない人。

こおり「瘴気と言うか、腐敗臭だろうコレは」

ひかげ
 フィアのパーティメンバ。小学5年生の女の子。
 何でもいいから世界一になりたいらしい。ひなたちゃんの双子の妹。

ひかげ「くさいっ! こんなにくさいなんて聞いてないわよっ! もーやだもー帰るっ!」

ひなた
 フィアのパーティメンバ。小学5年生の男の子。
 絵本作家になるのが夢らしい。ひかげちゃんの双子の兄。

ひなた「ゾンビの巣なんですから、ある程度は予想していましたけど・・・
    ここまで臭いがキツいと、ちょっとしんどいですね…」


ノライヌ
 友人であるイリスから預かった犬。ダンボールで出来ている。弱っていたが、この世界に来てすっかり元気に。
 言葉を喋る事は出来ないが、実は字が書ける。

ノライヌ「わんわん!」

氷希宮 亜流 (ひきみや ある)
 母校である九頭竜学園の先輩。いつも何かと頼りにしている先輩。少しお説教くさい。
 フィアに学園に戻ってくるようにと連絡を入れてきた。

亜流「あと2日猶予をあげるから、しっかりと帰る準備をしておくように」

宿屋の息子
 エスタにある宿屋の息子。
 ゾンビ退治に向かったまま行方知れずとなっていた。

息子「レムネットちゅわぁあぁああんっ!!」

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■探索11日目の日記■

ゾンビの住まう洋館の門前にて。

フィア「帰りたくないっ! 帰りたくないようっ!!」

独りきりになってしまった私は、誰にも見られていないのを良いことに、わんわんと泣いた。
うっうっ・・・ひっく・・・うっううっ・・・
5分・・・10分経っただろうか。
ようやく涙が止まり、少しずつ落ち着きを取り戻す。

私は・・・九頭竜学園中等部の2年生。
友人から預かっていたペットのノライヌを元気にするため、セルフォリーフを訪れた。
お蔭様でノライヌはすっかり元気を取り戻すことが出来た。
亜流姉さんの言う通り、ここに来た目的は達成した。
これ以上、この世界に留まる理由なんて・・・無い。

でも・・・

セルフォリーフ
この世界 は、生命力に満ち溢れる楽園・・・と言うわけではなかった。
生命力に満ちているのは事実だが・・・それは同時に凶暴なモンスターを生み、世界は混乱していた。
その混乱に耐え切れず、外の世界に救援要請を出す程に。
街から1歩外に出れば、そこは怪物の闊歩する危険地帯。
リンゴが野生化して暴れまわり、山猫やカマドウマは巨大化し、山荘にはゾンビが巣食う。
凶暴なモンスターに怯える村人。貴重な食料を荒らされる商人。帰らぬ息子を危惧する宿屋の主人。
こんなにも困っている人達が沢山いるのに、「私には関係ない」という顔をして、この世界を去ってしまっていいのか?

それに。

………
………………

こおり「…神坂一刀流、石刀火凍檻、推して参る!」

ひかげ「あんなの図体がでかいだけじゃない。あたしの敵じゃないっつーの」

ひなた「ひーちゃんてば、また強がっちゃって・・・」

………………
………

この10日間、一緒に過ごしてきた仲間たち。
みんなスゴく個性的で、クセがあって・・・時には意見が分かれ、喧嘩になる事もあった。
でも。
一緒に居ると、とても心強かった。
いつも以上の力が出せた。
独りでは越えられない丘の向こうにだって、行ける気がした。
彼らと一緒に依頼をこなせば、この世界で苦しむ人達の力になれると思えた。
そして何より・・・充実していた。楽しかった。
そう、とても楽しかったんだ。

こおり「お、フィア、こんな所に居たのか。探したぞ」

そこへ。こおりさんがひょっこり顔を出す。

ひかげ「あー、その顔、あんたゾンビに負けたなー? ざまあ!」

ひなた「ひーちゃん、僕達も負けたでしょ」

ノライヌ「わんわん! わんわん!」

他のメンバーも次々に登場する。
気が付けば、PTメンバ全員集合だ。

フィア「・・・えへへ。ゾンビ戦、負けちゃったぁ」

こおり「負けた割には随分と嬉しそうだな。何かあったのか?」

フィア「ううん、何でもない。何でもないよ」

そう、私は独りぼっちじゃない。
彼らと一緒に、もっと前に進みたい。あの丘の向こうを見てみたい。
今度こそゾンビを倒して、あの宿屋の息子をギャフンと言わせてやりたい。
平和になったこの世界を、この目で見てみたい。
だから・・・私は・・・


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亜流「2日ぶりだな。元気にしていたか?」

携帯電話の向こうから、故郷の先輩の声。

亜流「・・・約束の時間だ。帰る準備は出来たか?」

フィア「ごめん・・・亜流ねーちゃん。アタシ・・・帰らない!」

僅かな、間。

亜流「・・・その理由は?」

フィア「アタシ・・・この世界の力になりたい。困ってる人を助けたい」

亜流「だが、お前は正規の派遣救助員では無いんだぞ」

フィア「でも、九頭竜学園からセルフォリーフに、正規の救助員が派遣されたわけじゃないよね?
    だったらアタシが、救助員に立候補します!」


しばらくの間、沈黙が流れる。

亜流「・・・お前、言ってるコトが目茶苦茶だぞ。判ってるのか?」

フィア「・・・あうぅ、正規の手続きを取るにはどうすればいいかな?
    理事長先生に申請すればいい?」


亜流「やれやれ・・・では質問を変えよう。
   フィア、そんなにもその世界に拘る理由は何だ?」


いつになく真剣な口調で、亜流姉さんが尋ねる。

フィア「アタシの力で・・・何処まで出来るか・・・試したいの!
    この世界で知り合った仲間達と一緒なら、アタシはもっと先に進める気がするんだっ」


私は自分の気持ちを正直に伝えた・・・つもりだ。

亜流「・・・判ったよ。
   まったく、イリスといいフィアといい、一度言い出したら聞かないんだから」


フィア「亜流ねーちゃん! それじゃぁ・・・」

亜流「派遣員の手続きについては、私の方から理事長に掛け合っておく。
    ・・・その代わり、お前も一度決めた以上は、途中で投げ出すなよ!」


フィア「ありがとうっ! まかせてっ!!」

私は思わず飛び上がってしまった。

亜流「・・・やれやれ。イリスに続いてフィアまで出て行ってしまうとはね。
   全部片付いたら、今度こそちゃんと帰ってこいよ。私をあまり独りにしないでくれ」


フィア「ごめんね亜流ねーちゃん。
    きっちり依頼をこなしたら、必ず帰るから! 約束する!」


こうして私は、救援要請の派遣員として、正式にセルフォリーフに留まることとなった。
ここは凶悪なモンスターの闊歩する、とても危険な世界。
私の選択が、決して楽な道程でないことは承知している。
でも。

ノライヌ「わんわん♪」

こおり「ほら、オルゼの街は目の前だぞ。何をくずくずしている?」

仲間と一緒なら、きっと何とかなるって信じられるんだ。


# つづく #




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