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≪探索9日目 探索11日目≫

探索10日目


Diary

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キャラクター解説

フィア=ウィンド
 この物語の主人公。これがアタシの書く日記である以上、主人公の地位は揺るがないのだ!
 友人から預かった犬が元気を無くしてしまい、生命の力が溢れるというこの世界に来た。

フィア「困ってる人を放ってはおけないよ!」

石刀火 凍檻 (いわとび こおり)
 フィアのパーティメンバ。妙に立派な黄色いマユゲが特徴の青年。
 顔立ちは整っているけど、言葉を放つと残念でならない人。

こおり「どうした、浮かない顔をして? 九頭竜学園で学級崩壊でも起きたのか?」

ひかげ
 フィアのパーティメンバ。小学5年生の女の子。
 何でもいいから世界一になりたいらしい。ひなたちゃんの双子の妹。

ひかげ「こんなの相手にするなんて聞いてないわよ!」

ひなた
 フィアのパーティメンバ。小学5年生の男の子。
 絵本作家になるのが夢らしい。ひかげちゃんの双子の兄。

ひなた「逃がしてくれる気は無さそうですね…」

ノライヌ
 友人であるイリスから預かった犬。ダンボールで出来ている。弱っていたが、この世界に来てすっかり元気に。
 言葉を喋る事は出来ないが、実は字が書ける。

ノライヌ「わんわん!」

氷希宮 亜流 (ひきみや ある)
 母校である九頭竜学園の先輩。いつも何かと頼りにしている先輩。少しお説教くさい。
 フィアに学園に戻ってくるようにと連絡を入れてきた。

亜流「あと2日猶予をあげるから、しっかりと帰る準備をしておくように」

宿屋の主人
 エスタの街で宿屋を経営している、白髪の目立つ壮年の主人。
 息子がゾンビ退治に向かったまま戻ってきておらず、安否を気にしている。

主人「私事で済まんが…ゾンビ退治に向かってはくれんだろうか?
   そのついでに…息子の安否を確かめて欲しいんじゃ」


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■探索10日目の日記■

エスタ北西の山岳地帯に、その洋館は建っていた。

ノライヌ「がるるる…」

ノライヌが、まだ見えぬ敵を威嚇している。
門の奥からは、ただならぬ邪悪な気配。瘴気と言い代えてもいいだろう。

フィア「うわっ、瘴気が目にしみる…」

この隠しようのない気配が、この奥にゾンビが居ますよってアピールしている。

こおり「瘴気と言うか、腐敗臭だろうコレは」

ひかげ「くさいっ! こんなにくさいなんて聞いてないわよっ! もーやだもー帰るっ!」

ひなた「ゾンビの巣なんですから、ある程度は予想していましたけど・・・
    ここまで臭いがキツいと、ちょっとしんどいですね…」


門をくぐる前から、全員涙目になっていた。

フィア「今回の目的は2つ。ゾンビの退治と、宿屋の息子さんの捜索だよ。
    みんな、用意はいい?!」


涙をこらえつつ私は言った。それに併せて、皆が無言で頷く。

フィア「大きな館だから捜索には時間がかかると思う。臭いはキツいけど、慌てず慎重に行こう!
    それから…くれぐれもはぐれないようにね!」


私はそう激を飛ばすと、先陣をきって館の門をくぐった。


###



フィア「こおりさん?! ひなたくん?! ひかげちゃん?! ノラちゃん?!
    ちょっとー?! どうして誰も居ないのよーっ?!」


館に入って15分。気が付けば、自分独りになっていた。

フィア「もう、だから入る前に『はぐれないように』って注意したのにっ!
    みんなあっさり迷子になっちゃうんだからー!」


こおりさんも、ひなたくんも、ひかげちゃんも、ノライヌも…この広い館の中で迷子になってしまったようだ。
実は私一人が迷子で、他の皆は大丈夫とか、そういうオチではない…んじゃないかな?
最近ずっと仲間たちとワイワイやってきたせいか、独りと言うのはやたらと静かで…何と言うか…寂しい。心細い。
って言うか、お化け屋敷の中で一人きりってめっちゃ怖いんですけど!!

――ミシリ

そんな時だ。不意に、背後の床板が軋む音。

フィア「だだだ誰っ?!」

私は咄嗟に振り返る。

レムネット「ごめんなさい、驚かせるつもりはなくて…」

そこには、シスターの格好をした女性が立っていた。

レムネット「私はレムネットと言います。アンデット退治の旅をしていて…」

ガタガタガタッ!!

再び大きな物音。
こ、今度こそゾンビかっ?!

息子「レムネットちゅわぁあぁああんっ!!」

そこへ現れたのはゾンビではなく…下心丸出しの青年だった。

レムネット「また貴方ですかっ! しつこいなぁもう!!」

シスターが青年を手慣れた手つきであしらう。どうやら彼女がこの男に付きまとわれるのは、今回が初めてでは無いようだ。

息子「宿屋を飛び出し幾星霜、レムネットちゃんは俺の運命の人やーっ!
   貴女のためなら俺は冒険者にだって何だってなってみせるでーっ!」


宿屋を飛び出し…だと?!

フィア「ちょ…アンタ、ひょっとして宿屋の息子さん?!」

息子「確かに俺は宿屋の息子だが…何だねキミは?
   悪いがファンならお断りだよ。俺はレムネットちゃんという心に決めた人が…」


襟元を正しながらニヒルに笑う宿屋の息子。

フィア「ええい、とっとと宿屋に帰れ! どんだけ父親を心配させたら気が済むんじゃー!」

私は息子の顔面にベアハッグをかました。

息子「いってぇええぇえ!! 待った、タイム! タイィイム!!
   頼むから俺の話を聞いてくれっ!」


フィア「話って何よ?」

息子「俺はこのまま場末の宿屋を継いで一生を終わらせたくないんだ!
   俺にだって夢があるんやー! レムネットちゃんと結ばれたいんやーっ!」


青年は駄々っ子の様に両腕をぶんぶん振って抗議した。

フィア「そんなコトを言われても…ねぇ(汗」

息子「なんやー?! お前も俺をモブキャラ扱いするんかっ?!
   顔アイコンも無いサブキャラは、夢を持つ資格は無いっちゅうんかーっ?!
   恋したらアカンっちゅうんかーっ?!」


フィア「いや…そこまでは言ってないけど…」

レムネット「ごめんなさいね、息子さん。
      でも…貴方みたいな素人と一緒じゃ、アンデット退治の旅なんて続けられないから…」


レムネットさんが申し訳なさそうに『お断り』の意志を告げる。

息子「ってコトは! ここのゾンビを倒せるくらいの腕前があればっ!
   俺を一人前と認めてくれるってコトっスね?! 一緒に旅してもいいんスねっ!」


レムネット「あ…いえ、そういう意味では…」

ガタガタガタッ!!

ゾンビA「今日はいい天気ですね」

ゾンビB「こんな日は…」

ゾンビC「のんびり二度寝がしたくなる!」

そんな所へ。タイミングよく(?)ゾンビが3体現れた!

息子「現れたなゾンビども! この俺が冥土に送ってやんぜっ!
   俺のカックイイところ、見ててねレムネットちゃーん!!」


レムネット「いいから前見て、前!!」

フィア「ちょ…何この展開っ?! とにかく戦るしかねーっ!!」


###



30分後。

フィア「………。負けちゃったね」

私達はゾンビにコテンパンにノされて、館の外に放り出さた。

レムネット「彼らは昼寝を邪魔されるのを嫌ってるだけですから…私達の命までは奪いません。
      でも、相手の強さは痛いほど判ったはず。これに懲りたら、もうあんな無茶な真似は…」


息子「…俺は諦めないぜ」

息子は意志のこもった口調で呟いた。

息子「勝てないなら、勝てるようになるまで鍛えるだけだ。
   俺は夢を諦めない! こんな所で立ち止まらない!
   こんな処が自分の限界であってたまるかよっ!」


フィア「あんた…」

なんだコイツ、けっこう格好いいヤツじゃないか…

息子「レムネットちゃんと結ばれるまで…俺はフルスロットルで突っ走るんやーっ!!」

前言撤回! ダメだコイツ!

レムネット「ええっと…私はそろそろこの辺で。ごめんあそばせー」

レムネットさんは逃げる様に去っていった。
気付けば、私と息子の二人だけだ。

フィア「…あんたは、この先も勝てるようになるまでココで頑張るの?」

息子「当たり前だろう? …お前はどうなんだよ?」

フィア「アタシ? アタシは…」

亜流姉ぇが指定した期限は明日。私は明日、学園に帰らなければいけない。

フィア「私は…」

息子「お前の事情なんて知らねーけどよ。迷ってるんならアレだ。
   ドッチが先にゾンビ戦を突破できるか、俺と勝負ってコトでどーよ?」


フィア「ちょ…何を勝手なコト…」

息子「お前が『もうゾンビとは戦えません』って言うなら、それでもいいぜ。
   だったら俺の不戦勝だな」


青年はそう言ってカラカラ笑うと、そのまま手も振らず去ってしまった。
私はまた独りになってしまった。
………………。
………。

フィア「帰りたくないっ! 帰りたくないようっ!!」

誰も居ないのをいいことに…私は思い切り泣いてしまった。


# つづく #




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