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キャラクター解説
フィア=ウィンド この物語の主人公。これがアタシの書く日記である以上、主人公の地位は揺るがないのだ! 友人から預かった犬が元気を無くしてしまい、生命の力が溢れるというこの世界に来た。
フィア「困ってる人を放ってはおけないよ!」
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石刀火 凍檻 (いわとび こおり) フィアのパーティメンバ。妙に立派な黄色いマユゲが特徴の青年。 顔立ちは整っているけど、言葉を放つと残念でならない人。
こおり「どうした、浮かない顔をして? 九頭竜学園で学級崩壊でも起きたのか?」
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ひかげ フィアのパーティメンバ。小学5年生の女の子。 何でもいいから世界一になりたいらしい。ひなたちゃんの双子の妹。
ひかげ「こんなの相手にするなんて聞いてないわよ!」
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ひなた フィアのパーティメンバ。小学5年生の男の子。 絵本作家になるのが夢らしい。ひかげちゃんの双子の兄。
ひなた「逃がしてくれる気は無さそうですね…」
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ノライヌ 友人であるイリスから預かった犬。ダンボールで出来ている。弱っていたが、この世界に来てすっかり元気に。 言葉を喋る事は出来ないが、実は字が書ける。
ノライヌ「わんわん!」
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氷希宮 亜流 (ひきみや ある) 母校である九頭竜学園の先輩。いつも何かと頼りにしている先輩。少しお説教くさい。 フィアに学園に戻ってくるようにと連絡を入れてきた。
亜流「あと2日猶予をあげるから、しっかりと帰る準備をしておくように」
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宿屋の主人 エスタの街で宿屋を経営している、白髪の目立つ壮年の主人。 息子がゾンビ退治に向かったまま戻ってきておらず、安否を気にしている。
主人「私事で済まんが…ゾンビ退治に向かってはくれんだろうか? そのついでに…息子の安否を確かめて欲しいんじゃ」
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■探索10日目の日記■
エスタ北西の山岳地帯に、その洋館は建っていた。
ノライヌ「がるるる…」
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ノライヌが、まだ見えぬ敵を威嚇している。 門の奥からは、ただならぬ邪悪な気配。瘴気と言い代えてもいいだろう。
フィア「うわっ、瘴気が目にしみる…」
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この隠しようのない気配が、この奥にゾンビが居ますよってアピールしている。
こおり「瘴気と言うか、腐敗臭だろうコレは」
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ひかげ「くさいっ! こんなにくさいなんて聞いてないわよっ! もーやだもー帰るっ!」
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ひなた「ゾンビの巣なんですから、ある程度は予想していましたけど・・・ ここまで臭いがキツいと、ちょっとしんどいですね…」
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門をくぐる前から、全員涙目になっていた。
フィア「今回の目的は2つ。ゾンビの退治と、宿屋の息子さんの捜索だよ。 みんな、用意はいい?!」
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涙をこらえつつ私は言った。それに併せて、皆が無言で頷く。
フィア「大きな館だから捜索には時間がかかると思う。臭いはキツいけど、慌てず慎重に行こう! それから…くれぐれもはぐれないようにね!」
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私はそう激を飛ばすと、先陣をきって館の門をくぐった。
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フィア「こおりさん?! ひなたくん?! ひかげちゃん?! ノラちゃん?! ちょっとー?! どうして誰も居ないのよーっ?!」
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館に入って15分。気が付けば、自分独りになっていた。
フィア「もう、だから入る前に『はぐれないように』って注意したのにっ! みんなあっさり迷子になっちゃうんだからー!」
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こおりさんも、ひなたくんも、ひかげちゃんも、ノライヌも…この広い館の中で迷子になってしまったようだ。 実は私一人が迷子で、他の皆は大丈夫とか、そういうオチではない…んじゃないかな? 最近ずっと仲間たちとワイワイやってきたせいか、独りと言うのはやたらと静かで…何と言うか…寂しい。心細い。 って言うか、お化け屋敷の中で一人きりってめっちゃ怖いんですけど!!
――ミシリ
そんな時だ。不意に、背後の床板が軋む音。
フィア「だだだ誰っ?!」
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私は咄嗟に振り返る。
レムネット「ごめんなさい、驚かせるつもりはなくて…」
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そこには、シスターの格好をした女性が立っていた。
レムネット「私はレムネットと言います。アンデット退治の旅をしていて…」
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ガタガタガタッ!!
再び大きな物音。 こ、今度こそゾンビかっ?!
息子「レムネットちゅわぁあぁああんっ!!」
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そこへ現れたのはゾンビではなく…下心丸出しの青年だった。
レムネット「また貴方ですかっ! しつこいなぁもう!!」
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シスターが青年を手慣れた手つきであしらう。どうやら彼女がこの男に付きまとわれるのは、今回が初めてでは無いようだ。
息子「宿屋を飛び出し幾星霜、レムネットちゃんは俺の運命の人やーっ! 貴女のためなら俺は冒険者にだって何だってなってみせるでーっ!」
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宿屋を飛び出し…だと?!
フィア「ちょ…アンタ、ひょっとして宿屋の息子さん?!」
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息子「確かに俺は宿屋の息子だが…何だねキミは? 悪いがファンならお断りだよ。俺はレムネットちゃんという心に決めた人が…」
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襟元を正しながらニヒルに笑う宿屋の息子。
フィア「ええい、とっとと宿屋に帰れ! どんだけ父親を心配させたら気が済むんじゃー!」
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私は息子の顔面にベアハッグをかました。
息子「いってぇええぇえ!! 待った、タイム! タイィイム!! 頼むから俺の話を聞いてくれっ!」
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フィア「話って何よ?」
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息子「俺はこのまま場末の宿屋を継いで一生を終わらせたくないんだ! 俺にだって夢があるんやー! レムネットちゃんと結ばれたいんやーっ!」
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青年は駄々っ子の様に両腕をぶんぶん振って抗議した。
フィア「そんなコトを言われても…ねぇ(汗」
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息子「なんやー?! お前も俺をモブキャラ扱いするんかっ?! 顔アイコンも無いサブキャラは、夢を持つ資格は無いっちゅうんかーっ?! 恋したらアカンっちゅうんかーっ?!」
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フィア「いや…そこまでは言ってないけど…」
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レムネット「ごめんなさいね、息子さん。 でも…貴方みたいな素人と一緒じゃ、アンデット退治の旅なんて続けられないから…」
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レムネットさんが申し訳なさそうに『お断り』の意志を告げる。
息子「ってコトは! ここのゾンビを倒せるくらいの腕前があればっ! 俺を一人前と認めてくれるってコトっスね?! 一緒に旅してもいいんスねっ!」
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レムネット「あ…いえ、そういう意味では…」
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ガタガタガタッ!!
ゾンビA「今日はいい天気ですね」
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ゾンビB「こんな日は…」
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ゾンビC「のんびり二度寝がしたくなる!」
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そんな所へ。タイミングよく(?)ゾンビが3体現れた!
息子「現れたなゾンビども! この俺が冥土に送ってやんぜっ! 俺のカックイイところ、見ててねレムネットちゃーん!!」
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レムネット「いいから前見て、前!!」
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フィア「ちょ…何この展開っ?! とにかく戦るしかねーっ!!」
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30分後。
フィア「………。負けちゃったね」
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私達はゾンビにコテンパンにノされて、館の外に放り出さた。
レムネット「彼らは昼寝を邪魔されるのを嫌ってるだけですから…私達の命までは奪いません。 でも、相手の強さは痛いほど判ったはず。これに懲りたら、もうあんな無茶な真似は…」
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息子「…俺は諦めないぜ」
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息子は意志のこもった口調で呟いた。
息子「勝てないなら、勝てるようになるまで鍛えるだけだ。 俺は夢を諦めない! こんな所で立ち止まらない! こんな処が自分の限界であってたまるかよっ!」
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フィア「あんた…」
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なんだコイツ、けっこう格好いいヤツじゃないか…
息子「レムネットちゃんと結ばれるまで…俺はフルスロットルで突っ走るんやーっ!!」
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前言撤回! ダメだコイツ!
レムネット「ええっと…私はそろそろこの辺で。ごめんあそばせー」
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レムネットさんは逃げる様に去っていった。 気付けば、私と息子の二人だけだ。
フィア「…あんたは、この先も勝てるようになるまでココで頑張るの?」
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息子「当たり前だろう? …お前はどうなんだよ?」
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フィア「アタシ? アタシは…」
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亜流姉ぇが指定した期限は明日。私は明日、学園に帰らなければいけない。
フィア「私は…」
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息子「お前の事情なんて知らねーけどよ。迷ってるんならアレだ。 ドッチが先にゾンビ戦を突破できるか、俺と勝負ってコトでどーよ?」
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フィア「ちょ…何を勝手なコト…」
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息子「お前が『もうゾンビとは戦えません』って言うなら、それでもいいぜ。 だったら俺の不戦勝だな」
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青年はそう言ってカラカラ笑うと、そのまま手も振らず去ってしまった。 私はまた独りになってしまった。 ………………。 ………。
フィア「帰りたくないっ! 帰りたくないようっ!!」
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誰も居ないのをいいことに…私は思い切り泣いてしまった。
# つづく #
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